自動車学校の合宿は、最短日数(AT14日、MT16日)位で免許取得できるのがウリですよね。
短期なら、ATで約3週間。通いならば、教習期限ギリギリの9か月の間。
合宿や短期だと通いに比べて指導方法に違いはあるのでしょうか?
これから入校を考えている方には気になるポイントですよね。
実は、かなり違うんです。
合宿ならば、合宿の指導方法があるのです。それを知らないで入校すると、こんなにキツイの?って思う可能性が高いのです。
この記事を読めば、合宿生に対する指導方法、通い生に対する指導方法、について一般的な違いを知ることができます。
知ることにより、予想外の対応でとまどう事は少なくなりますよ。
自動車学校の、合宿・短期・通いの違いで、指導方法は変わるの?
私が指導員になって間もなくの頃、合宿生が多くてベテランで手が回らなくなりました。そこで私に合宿生の技能教習が当たった時に先輩教官に言われた言葉です。因みに教官歴では先輩ですが、歳は私の方が上です。(笑)
(先輩)「お前、合宿生の指導方法を知っとるか。」
(私)「はい、なるべく短期に卒業できるように効率よく教えるのですね。」
(先輩)「お前は馬鹿か?そんなことを言ってたら、今後合宿生はお前に教習させられんな。」
(私)「何ですか?教えてください。」
(先輩)「そんなことは自分でつかむものだ。アホ!」と一喝されました。
皆さん、なんだと思いますか?このやり取りが、教習所の実態を表しているのです。
自動車学校の合宿免許は、多くは、延泊(延長宿泊)数日までは追加料金がかかりません。
通常は、途中で帰宅したとしても、延泊に数えられます。
延泊の数日間の滞在費や補修料金は自動車学校の負担です。
もうお判りですね。延泊されると自動車学校の持ち出し(お金)が増え、儲けが少なくなるのです。
そんなことを、先輩教官が言えるはずもないから、「自分でつかめ!」と言ったのです。
このことからわかりますよね。期間で分けられるコースによって指導方法が変わるのですね。
しかし、指導員初心者の頃のレベルでは変えることはできませんでしたね。
ベテランになるにしたがって、だんだん指導方法を変えることを学んでいきましたね。
自動車学校の「合宿」の指導方法の特徴!
何分、合宿生は規定時間(最短時限)で卒業させなければなりません。一段階では一日2時限の技能教習があります。2段階では多い時は一日3時限の技能教習があります。
つまり、前回の技能教習の内容は覚えているという前提で進められます。先輩の決まりきった教え方をしていないと、「教えていない」と罵声が飛ぶのです。教習生が「忘れた」と言ったら、「印象に残る、記憶に残る教習をしろ」と嫌味を言われるのです。「さっき(又は,昨日)習ったことを教習生が忘れるはずがない。教えてないのと同じだ。お前、指導員の資格返納しろ」と怒鳴られたこともあるのです。
もうお判りでしょう。特に新人指導員は、先輩の目を伺いながら、印象に残るように、スパルタ教育的に指導しなければならないのです。例え、自分の指導方法に自信があっても、その指導方法の方が理解してもらいやすいと思っても、自分を押し殺して指導しなければならないのです。
従って、リーダー的存在の教官の指導方法に賛同する指導員しか担当しないことが多いです。
一方、先輩たちは、のびのびとニコニコと教習できるのです。
・合宿生は、スパルタ教育的なティーチングを受け入れなければならない。受験勉強の少人数精鋭の予備校みたいなイメージですかねぇ。
(ティーチングについては、後程説明しますね。)
・合宿生は、毎回同じような指導方法を容認しなければならない。
・合宿生は、教習を楽しめていない教官の指導を受けなければならない可能性大なのです。
自動車学校の「短期」の指導方法の特徴!
こちらは、合宿と違って、毎日詰め詰めで教習する必要がないので、特定の指導員又は藩の指導員で指導することが多いですね。
特定の指導員又は班の指導員が原則担当しますので、5人程度の指導員がランダムに担当することが多いです。
しかし、班というのは、指導方針で決められているのではなく、教習所の組織として運営しやすいように決められていますので指導方法がばらばらな場合も多いです。
・短期生は、合宿ほどプレッシャーがかからないので、ある程度は、のびのびと教習に望める感じですかねぇ。公立中学校のイメージですかね。時間ごとに変わるのも似たところがありますよね。
・短期生は、様々な指導方法に触れることができやすいですね。
・教官は、自分をある程度出せるので、教官としては楽しめますね。この教え方で上手くいくようだったら、次の教習生にも試してみようかな?とか。(笑)
自動車学校の「通い」の指導方法の特徴!
通いの場合だと、一週間くらい技能教習があく事は頻繁にありますね。時には数ヶ月あく事も。
通いの人でもほぼ毎日来られる方は、短期生と同様ですね。ただ、しばらく来ない方になると、前回に習ったことを忘れていることが多いのです。
・通いの方になると、前回から日もあいてることもあり、前回の教習の事を思い出したり、その後教本を読んで考えたことを聞くところから始めることが多いですね。いわゆる、コーチング手法です。
(コーチングについては、後程説明しますね。)
・通いの人になると、様々な教官に会う可能性は高いですが、学校に来ていない間に、知人等から情報を得て、指導員を指名する場合も少なくありませんね。受付で、「その指導員は休みです!」と言われたら、「今度いつ来られますか?」と来ているのを見かけたことがありますね。
・特に、指名された教官は、のびのびと教習できますよね。それが教習生にとっても心地よいのでしょうね。
指導方法!ティーチングとコーチング!の違いとは?
ティーチングとコーチングは、よく聞く言葉ですが、教育の手法や、教育の目的等の多くの部分で異なります。 それぞれどういった定義なのかを解説します。
簡単に言えば、ティーチャー(小中学校の教員)コーチ(スポーツ選手のサポート)というイメージですね。
自動車学校の指導方法!ティーチングとは?
ティーチングはその名の通り、先生が生徒に授業を行うように、有資格者等経験豊富な人が、経験が少ない人を相手に自分の知識や技術を教えることです。
ティーチングにおける指導方法では、教官から教習生への一方的な指導になります。
ティーチングは教官が正解を知っており、いわゆる教科書通りに指導します。教官の場合は、教本を基本にしますよね。
自動車学校の場合は1対1で行われることも多いですが、一般的には、1対多人数の講義形式で行われることが多いですね。
ティーチングは、小中学校等で経験しているので、教習生も慣れっこですよね。教官にとっても、「自分が教えて上手になった」という満足感が得られますよね。
自動車学校の指導方法!コーチングとは?
コーチングは、対話を通して教習生が、自ら答えを導き出せるようにサポートする指導法です。
コーチングにおける指導方法は、教官と教習生側の双方向となります。
コーチングは教習生が予習等で一定の答えを考えてきているという前提で行われる事が多いです。 コーチングは基本的に1対1で行われます。自動車教習には最適ですね。
教習生に適切な質問を投げかける事で、教習生が自ら正解を導き出せるように導くものです。
ティーチングとは異なり、人間関係が大切です。カウンセリング用語ではアイスブレーク(固い氷を溶かす)という言葉があります。人間関係と適切な投げかけで、教習生のやる気を引き出します。本人の努力をサポートしていくため、教習生のやる気にも左右されます。
コーチングでは、教えられることに慣れている人にとっては、物足りないかもしれません。又、教官にとっても、自分が教えたという満足感に浸れないかもしれません。
自動車学校の指導方法!ティーチングのメリットとデメリット
自動車学校において、教習生を指導する場合にどようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。ティーチングとコーチングのメリットとデメリットを理解しておれば、教習生も教官の意図が良くわかり、上達も早まると思います。
自動車学校の指導方法!ティーチングのメリット
ティーチングは、相手に正解を教えて指導するという特徴があります。短時間で効率よく大切なスキルや情報を伝達できるというメリットがあります。だから、合宿生には、教本通りの事を指導して習得できるというわけです。
又、一方通行で指導できるため、効果的に指導する事ができます。
ティーチングは、一対多人数にも使えるわけですから、一対一の指導ならば尚更効率的です。小学校教員の経験のある私にしてみれば、覚えることは一学年の一教科程度です。(笑)
自動車学校の指導方法!ティーチングのデメリット
一方でティーチングでは、教官の中に明確な答えがあるものしか伝達することができません。教本にない事を教えてはいけないのです。
教習生が受け身になってしまい、いわゆる、言われた事しかしないようになってしまうデメリットがあります。
教官が一方的に指導をすることが多いため、教習生が自分の頭では考える習慣が身に付けづらくなります。自分で考えて行動することが多くなります。
路上では、「先生ここでウィンカーを出すんですか?」とか、標識が目の前に見えているのに「先生、このでの制限速度は何キロですか?」などの質問をする人も多いです。ティーチングによる弊害の一つでしょうね。
自動車学校の指導方法!ティーチングの効果を高める実践例!
ティーチングの効果を高めるために、私が実践していることをお話ししましょう。
ティーチングは具体的な言葉で伝える!
ティーチングを行っていく上では、指導したいな教を可能な限り具体的な言葉で伝える事ですね。 例えば、ハンドルの回し方ひとつとっても、「もっと回せ」とか「ゆっくり回せ」とか言わないように努めています。
「半回転ほどを、5秒くらいかけて回してごらん」というように。
因みに、ハンドルの回し方の指導については、下記のリンクから見ることができますね。
ティーチングは具体例を交え相手に手本を見せる!
教習生にわかりやすく伝えるためには、具体例を交え手本を示すことも重要です。教習では、左折の手本を見せる時に、窓を開けて前輪の位置を見てもらいます。「もうすぐ前輪が縁石のカーブ部分に差し掛かりますよね。運転席から見たら、一時停止の標識がハンドルとほぼ並んでいますよね。だから、ここで回し始めたら良いのです。 」と伝えたりもします。
ティーチングは理解度を確認するためのテストを行う!
ティーチングで教える内容は、明確な答えがあるため、振り返りの試テストを行うように努めています。
先ほどの、ハンドルの回し始めの例では、「ハンドルの回し始めはどこでしたっけ?」と問いかけることで、記憶がより鮮明になりますよね。
自動車学校の指導方法の違い!ティーチングとコーチング!
自動車学校の指導方法!コーチングのメリット
コーチングの最大のメリットは、教習生が自分の頭で考える力を付けさせる習慣を、身に着けられることです。このことは、自立を促せるとい事につながります。
コーチングは相手の能力を最大限に引き出すため、自主性を促す方法です。
自動車教習の対象となる教習生は受動的になってしまう傾向があります。言葉は悪いですが、「時間さえこなせば免許は取得できる」と安易に考えている教習生も多くなってきています。
学科教習では基本的にティーチングであるために、コーチング中は、教習生が迷うこともしばしばです。教習を受ける姿勢のプロセスを評価して、中期的な教習を行います。人によっては時間がかかりますが、私の予想を超える上達を見せてくれることがあります。これは指導員としての望外の喜びです。冗談で、「おいおい、20分前の山本さんと別人ではないか?ほかの人とドライバーチェンジしたら駄目だよ」(笑)と言うと、とても嬉しそうにしてくれます。
自動車学校の指導方法!コーチングのデメリット
一方でコーチングは、1対1形式で行われることが多いため、指導に時間がかかってしまいます。又、人間関係が崩れる(信頼感系が無くなる)と、効果が出ないというデメリットもあります。
又、教習生の中にある実力を引き出そうとするため、教習生側に最低限の知識や意欲が求められます。正直に申します。初めての自動車の教習で、右手・左手、右足・左足、等を何度も間違えるような人は、とてもコーチングはできません。
教習生側が答えられるかは、指導する教官側の指導力のスキルにも深く関係してきます。
教官と思惑と教習生の思惑がある程度一致しなければ、効果は薄いです。
自動車学校の指導方法!コーチングの効果を高めるためのポイント
コーチングを行っていく上で効果を高めるためにはどうすればいいのでしょうか。私が実践している2つのポイントをご説明します。
自動車学校の指導方法!相手の話に耳を傾け自主性を尊重する。
コーチングは、教習生が自発的に考え答えを出すことをサポートするものです。教習生の話に耳を傾け、自主性に考え行動することを尊重することがとても大切です。
そうすれば、教習生の立場から、私の思いもよらぬ視点からの意見が出たりするのです。
(なるほど、教習生はこういうところに目を付けて、運転しているのか)と感心することもしばしばです。同じ方法は知っていても、教習生の言葉で語られると新鮮な気づきがあります。
相手の意見を最後までじっくり聴くようにしています。じっくり聞いた上で「その場合はこうした方がいいかな?」とか「こうしてみたら上手くできるかもしれないよ」とか話して、一方的に押し付けられたという気持ちが生じないようにしています。
自動車学校の指導方法!疑問や質問を投げかける。
コーチングを行ってと、教習生がが行き詰まってしまい、なかなか正解に辿り着けないことも少なくありません。そのような場合は、答えに近づくことができるような気づきを促す質問や疑問を投げかけるようにしています。 そうすることで、直接答えを提示するよりも、より自発的に考え答えを導き出す力を養うことができます。そして、自分で見つけた方法だと自信を持ち、モチベーションが上がります。
自動車学校の指導方法の違い!ティーチングとコーチング!
今回は、合宿生、短期生、通学生について、ティーチングとコーチング手法から指導方法の違いについて述べました。
合宿プランか、短期プランか、通学プランか、迷っている方の参考になれば幸いです。
しかし、自動車学校の教官(指導員)は、漫然と仕事をこなしている人も少なくないです。過去の成功事例に胡坐をかいて成長しようとしない教官も多数います。
典型的な事例をお話ししましょう。10年以上前ですが、ティーチングしか能のないk指導員が居ました。
教官の部屋で、「今までS字とクランクをこの方法で教えてできなかった奴はいないのに、あいつはできない。あいつはおかしい。絶対免許は取れない。」と言っていたのです。
その次に私のS字とクランクの補修が回ってきました。私は、
「k指導員に習った通りやってみて。それで出来なかったら修正するから」」と言ったところ、クランクを通り始めた教習生が、
「k先生は、ここでハンドルを目一杯回せと言ったんですよね。でも、私は早すぎると思ったんですよね。でも、『回せ、回せ』とわめくので私もテンパってできなくなったんですよね。」と言うのです。
「では、あなたの正しいと思う方法でやってごらん。失敗しても大丈夫だから。」と言ってやらせてみたらできたのです。
2回目も3回目も!
k指導員は、自分の凝り固まった指導方法を教習生から学ぶ機会を逸してしまったのですね。
もう一つ、付け加えさせてください。
数万円高くても、是非とも安心パック(安心プラン)に入る事をお勧めします。補修が続くと、コーチングができる教官(指導員)に当たる可能性が高いです。
コーチングの指導員も喜ばしいのです。教習生ができるようになった喜び、他の教官の指導方法を伝え聞く喜び、上手く指導できた喜び(私の指導でベテラン指導員よりも出来るようになった)等々があるのです。
実際、何度も補修を受けてきた教習生が補修で私に回ってきたら、燃えますね!
「やったぁ!私の腕の見せ所だ!」と。(笑)
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