自動車学校の経営者は、教官である指導員に、期待を込めています。指導員がメインの仕事ですから、指導はできるに越したことは有りません。
しかし、教習生の状態を把握して、教習生にあった指導方法を見つけて欲しいと願っています。又、バージョンアップして、教習生から学んで、新しい指導方法を創意工夫してもらいたいと考えているようです。
指導員が、どんな教育・研修を受けて指導しているのかを学ぶことも大切ではないかと思います。
そこを理解しておれば、教習生の技量も上がる事間違いなしだと思います。
今までの指導法の温故知新!
過去の指導法を次世代が継承する(温故=故きを温め)ことは大切ですが、更なる工夫をして改善する(知新=新しきを知る)ことも大切だと感じています。
ティーチングとコーチングとは?違いとは?
指導方法!ティーチングとは?
ティーチングとコーチングは、よく聞く言葉ですが、教育の手法や、教育の目的等の多くの部分で異なります。 それぞれどういった定義なのかを解説します。
簡単に言えば、ティーチャー(小中学校の教員)コーチ(スポーツ選手のサポート)というイメージですね。
自動車学校の指導方法!ティーチングとは?
ティーチングはその名の通り、先生が生徒に授業を行うように、有資格者等経験豊富な人が、経験が少ない人を相手に自分の知識や技術を教えることです。
ティーチングにおける指導方法では、教官から教習生への一方的な指導になります。
ティーチングは教官が正解を知っており、いわゆる教科書通りに指導します。教官の場合は、教本を基本にしますよね。
自動車学校の場合は1対1で行われることも多いですが、一般的には、1対多人数の講義形式で行われることが多いですね。
ティーチングは、小中学校等で経験しているので、教習生も慣れっこですよね。教官にとっても、「自分が教えて上手になった」という満足感が得られますよね。
自動車学校の指導方法!コーチングとは?
コーチングは、対話を通して教習生が、自ら答えを導き出せるようにサポートする指導法です。
コーチングにおける指導方法は、教官と教習生側の双方向となります。
コーチングは教習生が予習等で一定の答えを考えてきているという前提で行われる事が多いです。 コーチングは基本的に1対1で行われます。自動車教習には最適ですね。
教習生に適切な質問を投げかける事で、教習生が自ら正解を導き出せるように導くものです。
ティーチングとは異なり、人間関係が大切です。カウンセリング用語ではアイスブレーク(固い氷を溶かす)という言葉があります。人間関係と適切な投げかけで、教習生のやる気を引き出します。本人の努力をサポートしていくため、教習生のやる気にも左右されます。
コーチングでは、教えられることに慣れている人にとっては、物足りないかもしれません。又、教官にとっても、自分が教えたという満足感に浸れないかもしれません。
自動車学校の指導方法!ティーチングのメリットとデメリット
自動車学校において、教習生を指導する場合にどようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。ティーチングとコーチングのメリットとデメリットを理解しておれば、教習生も教官の意図が良くわかり、上達も早まると思います。
自動車学校の指導方法!ティーチングのメリット
ティーチングは、相手に正解、又は正解に近い答えを教えて指導するという特徴があります。短時間で効率よく大切なスキルや情報を伝達できるというメリットがあります。
又、一方通行で指導できるため、効果的に短時間で指導する事ができると言われています。
ティーチングは、一対多人数にも使えるわけですから、一対一の指導ならば尚更効率的です。小学校教員の経験のある私にしてみれば、教官の仕事は、覚えることは一学年の一教科程度ですので、比較的楽です。
又、同じことを色々な教習生に指導するので、試行錯誤もしやすいと感じます。
自動車学校の指導方法!ティーチングのデメリット
一方でティーチングでは、教官の中に明確な答えがあるものしか伝達することができません。基本的に教本にない事を教えてはいけないという風潮があります。
又、れた事しかしないようになってしまうデメリットがあります。
教官が一方的に指導をすることが多いため、教習生が自分の頭では考える習慣が身に付けづらくなります。自分で考えて行動することができにくいと言えるでしょう。
路上では、「先生ここでウィンカーを出すんですか?」とか、標識が目の前に見えているのに「先生、このでの制限速度は何キロですか?」などの質問をする人も多いです。ティーチングによる弊害の一つでしょうね。
自動車学校の指導方法!ティーチングの効果を高める実践例!
ティーチングの効果を高めるために、私が実践していることをお話ししましょう。
ティーチングは具体的な言葉で伝える!
ティーチングを行っていく上では、指導したいな教を可能な限り具体的な言葉で伝える事ですね。 例えば、ハンドルの回し方ひとつとっても、「もっと回せ」とか「ゆっくり回せ」とか言わないように努めています。
「半回転ほどを、5秒くらいかけて回してごらん」というように。
因みに、ハンドルの回し方の指導については、下記のリンクから見ることができますね。
ティーチングは具体例を交え相手に手本を見せる!
教習生にわかりやすく伝えるためには、具体例を交え手本を示すことも重要です。教習では、左折の手本を見せる時に、窓を開けて前輪の位置を見てもらいます。「もうすぐ左前輪が縁石のカーブ部分に差し掛かりますよね。運転席から見たら、一時停止の標識がハンドルとほぼ並んでいますよね。だから、ここで回し始めたら良いのです。 」と伝えたりもします。
ティーチングは理解度を確認するためのテストを行う!
ティーチングで教える内容は、明確な答えがあるため、振り返りの為のテストを行うように努めています。
先ほどの、ハンドルの回し始めの例では、「ハンドルの回し始めはどこでしたっけ?」と問いかけることで、記憶がより鮮明になりますよね。
自動車学校の指導方法の違い!コーチングとは?
自動車学校の指導方法!コーチングのメリット
コーチングの最大のメリットは、教習生が自分の頭で考える習慣を、身に着けられることです。このことは、自立を促せるとい事につながります。
コーチングは相手の能力を最大限に引き出すため、自主性を促す方法です。
自動車教習の対象となる教習生は受動的になってしまう傾向があります。言葉は悪いですが、「時間さえこなせば免許は取得できる」と安易に考えている教習生も多くなってきています。
学科教習では基本的にティーチングであるために、コーチング中は、教習生が迷うこともしばしばです。教習を受ける姿勢のプロセスを評価して、中期的な教習を行います。人によっては時間がかかりますが、私の予想を超える上達を見せてくれることがあります。これは指導員としての望外の喜びです。冗談で、「おいおい、20分前の山本さんと別人ではないか?ほかの人とドライバーチェンジしたら駄目だよ」(笑)と言うと、とても嬉しそうにしてくれます。
自動車学校の指導方法!コーチングのデメリット
一方でコーチングは、1対1形式で行われることが多いため、指導に時間がかかってしまいます。又、人間関係が崩れる(信頼感系が無くなる)と、効果が出ないというデメリットもあります。
又、教習生の中にある実力を引き出そうとするため、教習生側に最低限の知識や意欲が求められます。正直に申します。初めての自動車の教習で、右手・左手、右足・左足、等を何度も間違えるような人は、とてもコーチングはできません。
教習生側が答えられるかは、指導する教官側の指導力のスキルにも深く関係してきます。
教官と思惑と教習生の思惑がある程度一致しなければ、効果は薄いです。
自動車学校の指導方法!コーチングの効果を高めるためのポイント
コーチングを行っていく上で効果を高めるためにはどうすればいいのでしょうか。私が実践している2つのポイントをご説明します。
自動車学校のコーチング指導方法!相手の話に耳を傾け自主性を尊重!
コーチングは、教習生が自発的に考え答えを出すことをサポートするものです。教習生の話に耳を傾け、自主性に考え行動することを尊重することがとても大切です。
そうすれば、教習生の立場から、私の思いもよらぬ視点からの意見が出たりするのです。
(なるほど、教習生はこういうところに目を付けて、運転しているのか)と感心することもしばしばです。同じ方法は知っていても、教習生の言葉で語られると新鮮な気づきがあります。
相手の意見を最後までじっくり聴くようにしています。じっくり聞いた上で「その場合はこうした方がいいかな?」とか「こうしてみたら上手くできるかもしれないよ」とか話して、一方的に押し付けられたという気持ちが生じないようにしています。
自動車学校のコーチング指導方法!疑問や質問を投げかける。
コーチングを行ってと、教習生がが行き詰まってしまい、なかなか正解に辿り着けないことも少なくありません。そのような場合は、答えに近づくことができるような気づきを促す質問や疑問を投げかけるようにしています。 そうすることで、直接答えを提示するよりも、より自発的に考え答えを導き出す力を養うことができます。そして、自分で見つけた方法だと自信を持ち、モチベーションが上がります。
自動車学校の指導方法の違い!ティーチングとコーチング!
今回は、合宿生、短期生、通学生について、ティーチングとコーチング手法から指導方法の違いについて述べました。
合宿プランか、短期プランか、通学プランか、迷っている方の参考になれば幸いです。
しかし、自動車学校の教官(指導員)は、漫然と仕事をこなしている人も少なくないです。過去の成功事例に胡坐をかいて成長しようとしない教官も多数います。
典型的な事例をお話ししましょう。10年以上前ですが、ティーチングしか能のないS指導員が居ました。
教官の部屋で、「今までS字とクランクをこの方法で教えてできなかった奴はいないのに、あいつはできない。あいつはおかしい。絶対免許は取れない。」と言っていたのです。
その次の時限に、その教習生のS字とクランクの補習が、私に回ってきました。私は、
「S指導員に習った通りやってみて。それで出来なかったら修正するから」」と言ったところ、クランクを通り始めた教習生が、
「S先生は、ここでハンドルを目一杯回せと言ったんですよね。でも、私は早すぎると思ったんです。でも、『回せ、回せ』と怒鳴るので私もテンパってしまったんですよね。」と言うのです。
「では、あなたの正しいと思う方法でやってごらん。失敗しても大丈夫だから。」と言ってやらせてみたらできたのです。
2回目も3回目も!
S指導員は、自分の凝り固まった指導方法を押し付けるあまり、教習生から学ぶ機会を自ら逸してしまったのですね。
もう一つ、付け加えさせてください。
数万円高くても、是非とも安心パック(安心プラン)に入る事をお勧めします。補修が続くと、コーチングができる教官(指導員)に当たる可能性が高いです。(ティーチング教官が「手に負えない」と感じて、コーチング指導員に押し付けてくるのです。
コーチングの指導員も喜ばしいのです。教習生ができるようになった喜び、他の教官の指導方法を伝え聞く喜び、上手く指導できた喜び(私の指導でベテラン指導員よりも出来るようになった)等々があるのです。
実際、何度も補修を受けてきた教習生が補修で私に回ってきたら、燃えますね!
「やったぁ!私の腕の見せ所だ!」と。(笑)
ティーチングとコーチングのまとめ
指導員主導の指導(ティーチング)とは?
基本的に、自動車学校は、ティーチング主体です。
決められた時間内に、決められた課題を教え込むスタイルです。
教習生主導の手助け(コーチング)とは?
最近広まりつつあるのが、コーチング主体です。
時間はかかっても、焦らずに、納得できるまで自発的成長を促す手法です。
ティーチング主体か?コーチング主体か?
ティーチング
・ティーチングは熱血指導や、事務的指導になりやすい!
・スパルタと言われることになりやすい。
・怒られた、叱られた、という口コミが多いのはこちらです。
コーチング
・コーチングは傾聴を大切にし、諭すように納得させることを重視しています。
・自主性を育むことを大切にしています。
・優しく、話を聞いてくれた、という口コミが多くなります。
教習所におけるティーチングとコーチングについての詳しい説明は下記の記事をどうぞ!
教習指導における守破離の考え方!
私は、複数の教習所での指導経験がありますが、どちらでも「守破離(しゅ・は・り)」という言葉を、経営陣から聞かされました。
教習所で言えば、
守破離の「守(しゅ)」
「守」は、先人が蓄積してきた指導を守る事、ルールを守る事、普遍の伝統を守る事でしょうか。
守破離の「破(は)」
「破」は、先人から学んだ手法や考え方にとらわれず、更に「高み」を目指して、新しい指導法を見つけるという事でしょうか。「殻を破る」と言う言葉が語源のようですね。
守破離の「離(り)」
教習所で言う「離」は、殻を破った後は、伝統から離れ、新たな自分の指導法を確立するという事でしょうね。会社組織から離れ、自分の強い信念で新たに会社を起業することに似ていると思います。勿論、「破」の先にある「離」ですから、ますます発展しなければなりません。
教習所におけるPDCAサイクル とは?
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメント(今回は教習指導)の質を高めようという概念です。
教習所におけるPDCAを考えてみました。
①Plan(計画)
Plan(計画)とは、
・目標の再確認
・目標を達成するための指導計画
を意味しています。計画を立てる時は、
- 誰に(Whom)=教習生に
- いつ(When)=どのタイミングで
- どこで(Where)=車内か車外か?
- 何を(What)=本時の重点目標
- なぜ(Why)=理由が理解できているか?
- どのように(How)=言葉で?教本で?模型で?
という5W1Hの要素を意識して検討を重ねます。
②Do(実行)
Do(実行)は、Plan(計画)で計画した目標をもとにした実行を意味しています。
ただし、ここでいう「実行」の意味は、「計画に従ってきちんと教習すること」だけではありません。「試行」という意味も含まれているのです。
教習では、計画通りに進むとは限りません。同じ言葉で指導しても、教官の本心が伝わるとは限りません。
Do(実行)では、
・計画通りに教習して、それが効果的だったのか?
・もっと別の教習方法が考えられないか?
などを振り返る段階でもあります。
そのため、
・一度にすべてを指導しない(教官も教習生も「ふりかえり」ができるように)
・目標に対しての進捗度や成果を記録(メモが無理なら、記憶)
・計画通りに進まない時は、改善点を記録
するということが重要になります。
※ 私は指導員になってから、「いつかは書籍を出したい」と思っていたので、業務終了後、この点をエクセルやワードに記録しておりました。
③Check(評価)
Check(評価)は、
・設定した目標やアクションプランが達成できているか
・計画通りに実行できたかどうか
教官の計画通りに進まなかった場合は、その原因の分析をします。そして、改善した指導の方法を考えます。
教官の計画通りに事が進んだ場合も、成功要因の分析を行い、その成功事例を更に効果的に高めるために、新たな指導法を考えます。
④Action(改善)
前段階のCheck(評価)で明らかになった、評価について、改善点を具体的に考えていきます。
教習では、一回一回が勝負です。教習生個人の力量や、理解度も一人一人違います。
時には(イヤ、ほとんどの場合)、50分間の教習の中で、PDCAサイクルが行われていると思ってください。
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